変形性膝関節症はこれまで鎮痛剤の内服やヒアルロン酸の関節内注射、リハビリなどの保存的治療や手術治療が一般的でした。(当院の主な手術▶)
参考サイト/@Zimmer-Biomet保存的治療と手術治療の間に位置し、“第3の治療”と呼ばれる再生医療が近年進歩しています。
再生医療とは、生きた細胞を患者さんの体外へ取り出し、人工的に加工して患者さんの体内に移植することで、損傷した臓器や組織の再生を助け、機能を回復させる治療法です。
変形性膝関節症にもこの再生医療が応用され、厚生労働省から認可された医療機関でのみ提供されています。当院では、標準治療に加えてこの“第3の治療”に着目し、変形性膝関節症の患者さんに提供できるさまざまな治療の中の新たな選択肢の一つとしていち早く取り入れて実践しています。
APS療法で膝関節の痛みや腫れに対して、改善傾向がみられました。
当院でAPS療法を行った患者さんの57症例を調査したところ、6割以上の患者さんに有効性が認められ、1年後でも効果が持続していました。約半数の患者さんは関節に水がたまる症状の減少がみられ、定期ヒアルロン酸注射の症例も大幅に減少しています。
再生医療を希望される患者さんにはKOOSと呼ばれる痛みや症状の評価を治療前・1か月後・3か月後・半年後・1年後と行っています。
点数が高値になるほど症状の軽減を表します。下記の表のような変化が見られました。
症状
1か月〜1年で有意に改善
痛み
1か月〜6か月で有意に改善
変形性膝関節症は状態を4段階に分けることができます。
最重度の変形がある患者さんでも改善効果がありますが、軽度~重度の患者さんと比較すると多くの方が1か月以内に改善し、また早期に効果が減弱していく傾向があります。
治療反応群において治療反応が
初めて見られた時期
軽症〜重症群と最重症群での
治療反応率の推移
ASC療法では膝関節軟骨の再生が期待できました。
治療前後の膝関節内の様子を3次元MRI画像解析システム(SYNAPSE VINCENT®)で比較すると、以下の症例ではASC施行後9か月に脛骨内側の関節軟骨や内側半月板の欠損部分が再生していることがわかります。
患者さんが診察にいらっしゃいましたら、再生医療や手術の経験が豊富な膝治療の専門医が患者さんの膝を診察します。
レントゲンやMRIのみならず、最先端の3次元MRI解析システム(SYNAPSE VINCENT®)を用いて、軟骨や半月板の状態が患者さんにも良くわかるように加工して詳しく説明します。
下記の図のように再生医療は変形が軽度から重度まで全般的に適応となる治療です。
しかし、変形の程度や症状によっては図内の緑色の枠で示した手術治療もご提案できる場合もあります。特に半月板損傷の症状がある患者さんは、負担が少ない関節鏡を用いた手術を事前に受けておくと再生医療の効果が高まります。
入院は避けたい。手術治療は最後の手段にしたい。今の自分に一番合う治療を受けたい。そのような患者さんのご意向を尊重しながら、当院では治療方法を決めていきます。
当院には膝治療の経験が豊富な理学療法士が多数在籍しています。
膝のリハビリを実施、指導することで、動作の改善や筋力増強を図り、膝の機能を高めます。
※再生医療当日は自費診療となるため、リハビリはできません。
それぞれの特徴を掲載しました。
治療方法について、ご不明点などございましたら、担当医までご相談ください。
種類 | 再生医療 | 従来からの治療法 | |
---|---|---|---|
ASC療法 | PRP/APS療法 | ヒアルロン酸 | |
内容 | 自己幹細胞 | 自己血液製剤 | 合成ヒアルロン酸 |
治療概要 | 腹部または大腿部から脂肪を採取、分離した幹細胞を増殖させた後関節に注射 | 自己血から抽出したPRPから有用なたんぱく質を精製し関節に注射 | 合成したヒアルロン酸を関節に注射 |
組織再生 | ○ | △ | × |
作用 | 炎症や痛みの抑制 軟骨の再生 |
炎症や痛みの抑制 | 関節の潤滑 |
頻度 | 基本的には1回 | 基本的には1回 | 週1回を5回 以後必要に応じて 継続 |
副作用 | 注射後の副反応や 痛みは ほぼ認められない |
一時的な痛みや 腫れが 出現する場合がある |
注射後の副反応や 痛みは ほぼ認められない |
一部位 あたりの 治療費 |
自費 | 保険適応 | |
132万円から | PRP10万円 APS35万円 |
※費用はすべて税込みでの表記です。
ASC療法とPRP/APS療法については、別ページに詳しく解説しています。
変形性膝関節症の治療は一つだけではありません。数ある治療法の中から、その患者さんに適した最良の治療方法を自ら選択いただけるような診療を心がけています。現在行っている治療の効果に悩まれている患者さんはぜひ当院にご相談ください。
なお、治療法によって適応疾患や保険適応、費用が異なりますので、詳しくはお問合せ下さい。